私の大切なミステスが、今日、消えた。
クリスマス。 一人の少年が消えた。
根源たる “存在の力” を失い、いなかったことになった。
ゆえに、その欠落は誰にも気付かれず、忘れ去られた。
消滅してしまったモノは、二度と戻ってこなかった。
そうと知ってなお、シャナと吉田一美は、彼の生存を信じ続ける。 喧騒が戻った街の片隅で──。
場所は変わり、人知れず浮遊する移動城砦 『星黎殿』 内部。
一人の少年が空(から)であった玉座に着いた。
鎧った凱甲、靡く衣、その全てが緋色で、頭の後ろからは漆黒の竜尾が伸びている。
周りに控える “紅世の徒” らから、「盟主」 と呼ばれたその少年は、一同を睥睨し命を下す。
「盟主」 たる少年が、御崎市で待つ彼女たちの許に戻ることは無かった。
そして、古(いにしえ)の王 “祭礼の蛇” を奉迎した 「仮装舞踏会(バル・マスケ)」 は、“大命” へと静かに動き出す……。